Dolce Vita

09.An Extra


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* Kouki *
 朝は、目醒めと同時に逢える喜び。
 昼は、共に過ごせる嬉しさ。
 夜は、傍らで眠りにつける安らぎ。

 ふと目覚めた時は、その寝顔に愛しさを。
 目が合ったなら、微笑みは意識するまでもなく。
 名前を呼べば、返ってくる答えは俺の名前と共に。
 生活すら共有するのは、もはや日常で。
 時に離れても、部屋に残る自分のものでない香りが、確かな存在を感じさせてくれる。
 そして戻る場所はお互いの隣。

 その身体に溺れる時、清々しい雰囲気の中に隠された危ういほどの色香を、この腕の中で暴いて、思うさま狂い泣かせて。
 縋りつく腕に、絡み合う脚に、触れ合う肌に、生の歓びと性の悦びに浸る。
 お互いの鼓動と温もりに包まれ、ふたつの身体をひとつに繋げて、溶け合える瞬間。
 こんなにも心惹かれる存在が、この腕の中に在る幸福。

 それは幸せな、幸せな、甘い生活。

 * * * * *

 少しずつ、大胆になってきてくれる彼女。
 ひとつひとつ、誘いを掛けては、君の反応を楽しんでしまう。
 時に優しく甘えさせて、時に優しさに甘えて、
 なにより、それを許容し合う関係であること。
 手料理も、看病も、それ以外のいろんなことも、
 本当は、俺だけの特権だなんて言える立場ではないけれど、
 できれば、どうか、他の誰にもしないで欲しい。
 そんな君を見られるのが、俺だけだったら良いのに。

 貪欲だなと苦笑して、だけどやっぱり、それが本心で。
 嬉しくてたまらない一方で、どこか複雑な恋心。
 そんな気持ちさえ、君が教えてくれたもの。

 知り合ってから、まだ二ヶ月も経っていないことが信じられない。
 始まりはあんなふうだったのに、いつの間にこんなに近づいたのか。

 逆行することのできない時の流れに、無情を感じるどころか感謝したいくらいで。
 あの頃に戻ることだけは勘弁して欲しいと。
 けれど、その先にこんな日々が待っているならば、それでも構わないとも思うのだ。
 片想いしていた三年間さえ、喜びを増幅する理由にしかならない今は。

 * * * * *

 恋人同士じゃないのに。
 愛されているわけじゃないのに。
 ふと、そんな考えが頭をかすめることもあるけれど、
 それでも思う。こんな日々を幸福と言うのでなければ、いったい何が幸福なのかと。

 互いの存在を求め合って、これほど満ち足りているならば、
 肩書きなんてどうでもいいと。

 身体を重ねたのは、知り合ったその日。
 それなら心は?
 打ち解けて、親しくなれたと思えたのは、ごく最近のこと。
 重なり合っているとは言えない。
 けれど、重なった部分が全く無いとは、もう言えない。

 * * * * *

 だから、風澄。
 近づけば近づくほど、惹かれれば惹かれるほど、時折この心をよぎる不安を、
 どうか、その笑顔でかき消して欲しい。

 願わくは、この幸せな時間が、少しでも長く続くように。
 まるで恋人同士のような、こんな日々を。
Line
To be continued.
2010.07.08.Thu.
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